1)アトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎の治療はここ30年以上かわっていません。
ステロイド外用剤がおもな治療薬で、加えてタクロリムス外用剤(商品名プロトピック軟膏)抗アレルギー剤の内服や保湿剤がおもな治療薬です。
紫外線治療も以前から行われていて効果があります。
最近はでは、ナローバンドUVBやエキシマライトといった、有害な紫外線を除いた安全な治療器も普及してきました。
しかし、まだまだアトピー性皮膚炎の治療は満足いくものではありませでした。

2)アトピー性皮膚炎の原因

最近ではデュピクセントという生物学製剤が承認され、保険適応薬として使われるようになりました。
アトピー性皮膚炎の原因はまだ完全には明らかにされてはいません。
しかし、皮膚のバリア機能が低下する体質や、アレルギーを起こしやすいアトピー素因が原因なのは確かです。
アトピー性皮膚炎の皮膚では、外からの異物の侵入を防ぐバリア機能が低下し、皮膚への刺激やアレルギーによる皮膚炎を起こしやすくなっています。
皮膚炎によるかゆみのため皮膚を引っ掻くと、皮膚に傷つきます。
皮膚が傷つくと皮膚のバリア機能は弱くなり、そとからさらに異物がはいりやすくなり炎症が悪くなります。
悪い悪循環が続いていきます。
皮膚の内部では正常な皮膚に比べ、Th2 細胞という免疫細胞が増えた状態になっています。
そして、
Th2 細胞が産生する「IL- 4」と「IL-13」という物質(サイトカイン )は炎症を起こしたり、かゆみを誘発したり、皮膚のバリア機能に大切なフィラグリンという物質の発現を低下させたりします。

3)デュピクセント

サノフィ株式会社が発売してデュピクセントは、「IL-4」と「IL-13」という物質(サイトカイン)の働きを直接抑えることで、皮膚の2 型炎症反応(Th2細胞による炎症)を抑制する新しいタイプのお薬です。
アトピー性皮膚炎の皮膚の内部に起きている炎症反応を抑えることによって、かゆみなどの症状や、皮疹などの皮膚症状を改善します。
このようにデュピクセントはアトピー性皮膚炎を根本から抑えることができるはじめての生物学的製剤です。
治療費は高価で保険診療30%自己負担で、最初の1か月が73,476円、2か月目以降は毎月48,984円です。
デュピクセントについては、サノフィ株式会社のホームページ [ https://www.dupixent.jp/disclaimerをご覧ください。

4)その他の生物学的製剤

現在、ほかにもいろいろな生物学的製剤が開発されています。

  • IL-17C抗体(ノバルティス)
  • PDG4阻害剤(協和発酵キリン)

5)中程度~重症のアトピー性皮膚炎の臨床治験

山手皮フ科クリニックへ中程度~重症のアトピー性皮膚炎をお持ちの方を対象に生物学的製剤の臨床治験をおこなっています。
平成3011月より開始となっております。
ご興味にある方は当院ホームページ [ https://test4.webup-t.com/atopi.html ] をご覧ください。