更新日:2022.4.16/公開日:2017.3.10
このコンテンツは山手皮フ科クリニック 院長 豊福一朋が100%オリジナルで書いています。
2023年7月29日をもちまして一般保険診療を終了させていただきました。この記事はご参考までお読みください。
尋常性乾癬の治療
山手皮フ科クリニック院長の豊福一朋です。 乾癬はなかなか良くならない慢性の皮膚炎です。
乾癬と診断されずに、なおらない湿疹として治療されていることもあります。
乾癬と湿疹の治療は一部共通していますが、湿疹と異なるのは、ビタミンD外用剤、ナローバンドUVB、エキシマライトの紫外線治療器を用いることです。
なかなかよくならない乾癬ではナローバンドUVB、エキシマライトで治療をおこないます。
ナローバンドUVB、エキシマライトはどこの皮膚科にもある設備でなく、大学病院や総合病院の皮膚科にあります。
当院ではナローバンドUVB、エキシマライトをそろえていて、診療時間いつでも治療をおこなえます。
あなたが「大学病院や総合病院は診療時間内にいけない」、「長い待ち時間が困る」のであれば、山手皮フ科クリニックでの治療をご検討ください。
来院していただき、待ち時間が少なく、朝10時から夜18時00分(13-15時昼休み)のあいだに治療ができます。
1.乾癬とは
乾癬(かんせん)は「炎症性角化症」という皮膚の病気に分類されます。
皮膚から少し盛り上がった赤い発疹の上に、銀白色の鱗屑(りんせつ)が付着して、ポロポロとフケのように剥がれ落ちます。
好発部位は頭、四肢(腕、脚)の伸側、腰部、臀部など皮膚のこすれやすい部分ですが、爪などを含め全身のどこにでも起こりえます。
乾癬は日本人の人口のおよそ0.1%に発症すると推定されています。 昔はまれな病気でしたが、近年の生活習慣(食生活の西洋化など)の変化や、ストレスの増加など、さまざまな要因から患者数は徐々に増加しています。 白人では患者数はずっと多く、人口の2~3%といわれています。 乾癬の原因はまだ完全にはわかっていませんが、乾癬になりやすい遺伝的素因があることはわかっています。 遺伝的素因に様々な環境因子(不規則な生活や食事、ストレス、肥満、感染症、特殊な薬剤など)が加わると発症するといわれています。
2.治療について
軽症例:外用療法のみで治療します。
中等症~重症例:外用療法に加え、光線療法(ナローバンドUVB治療など)、内服療法(シクロスポリン、レチノイド、メトトレキセート)、生物学的製剤などの全身療法が併用されます。
1)外用療法
主にステロイドと活性型ビタミンD3(VD3)があります。これらを組み合わせることによって、副作用が少なく高い治療効果が得られます。
●ステロイド外用剤
ステロイドは効果発現が早いのですが、長期にわたって外用すると皮膚がうすくなったりするため、いったんよくなったら活性型ビタミンD3(VD3)へ移行します。
症状の強い時は”strongest”クラスの強いステロイド外用剤を使用して、よくなるに従い、強さのランクを“very strong”、 “strong”と弱くしていきます。
*乾癬の治療では外用剤を1日2回外用することが大切ですが、外用剤のべたつき、塗布に時間がかかるということで、外用が不十分なことがあります。その場合、軟膏基剤(下図左)よりローション剤(下図右)の方が塗りやすいといわれています。
また、ローション剤は夏期に冷蔵庫で冷やしてから使用するなど、塗り心地をよくする工夫も可能です。
●活性型ビタミンD3(VD3)外用剤
活性型ビタミンD3(VD3)は効果発現は遅いのですが、長期外用により副作用が少ないので、ステロイドを外用していったんよくなってからの寛解維持期の治療に向いています。
マキサカルシトール(オキサロール)、タカシトール(ボンアルファ、ボンアルファハイ)、カルシポトリオール(ドボネックス)、の3種類があります。
*乾癬に対する活性型ビタミンD3(VD3)軟膏のローテーション療法
長期にわたる活性型ビタミンD3(VD3)外用療法では時間の経過とともに効果が低下する方がいらっしゃいます。
この場合ボンアルファあるいはオキサロール→ドボネックス、ドボネックス→ボンアルファあるいはオキサロールというように使用する薬剤をローテーションすることによって、効果を出し続けることができます。
●ステロイドと活性型ビタミンD3(VD3)の配合外用剤
1日1回の塗布でステロイドと活性型ビタミンD3(VD3)の双方を外用する手間がはぶけます。
症状が強い時期から使うことができ、よくなってからの寛解維持期には活性型ビタミンD3(VD3)単剤に変更します。
ドボベット製剤(左から軟膏、ゲル、フォーム)
マーデュオックス軟膏
*シークエンシャル療法
朝はステロイド外用薬、夜は活性型ビタミンD3(VD3)外用薬と、1日のうちで両剤を塗り分け、症状の軽快に伴って、週末にステロイド外用薬、平日に活性型ビタミンD3(VD3)外用薬など、徐々に活性型ビタミンD3(VD3)外用薬の塗布割合を増やし、寛解維持期では活性型ビタミンD3(VD3)外用薬単剤のみでのコントロールを目指します。
治療はやや複雑になりますが、ステロイドの長期使用による副作用の軽減になります。
●コムクロシャンプー
乾癬の皮疹が頭皮にあると大量のフケがでます。
これまでは頭皮の乾癬に対してステロイド含有ローションやクリーム、活性型ビタミンD3(VD3)含有ローションで治療をおこなっていましたが、べたつきが不快だったり、広い範囲に外用するのがたいへんでした。
クロベタゾールプロピオン酸エステルを含んだコムクロシャンプーによる治療が便利です。
使用法は1日1回、乾燥した頭部に患部を中心に適量を塗布し、約15分後に水又は湯で泡立て、洗い流します。
2)光線療法
●ナローバンドUVB治療
乾癬治療には紫外線(UV)の照射が効果があり、長い間使われてきました。
紫外線の中でも中波長紫外線(UVB, 波長域290-315nm)は乾癬に特に効果がありますが、日焼けするなどの問題点があります。
ナローバンドUVBは、このUVBの中の非常に幅の狭い波長(311±2nm)の紫外線です。このナローバンドUVBを治療に使うことによって、日焼けを最小限に抑えて、高い治療効果を発揮することができます。
当院では米国Daavlin社製の三面鏡型を使用しています。立位のまま半身ずつの治療ができます。
原則として週に2~3回の通院が必要ですが、やむを得ない場合は週1回の通院で行います。照射時間は通常1~2分、長くて数分です。
費用は保険適応で、皮膚科光線療法(中波長紫外線)340点 自己負担は3割の方で1,020円、1割の方で340円となります。
当院ではナローバンドUVB 治療をおこなっております。勤務日時の関係で大学病院の診療日、診療時間に受診ができない方、長い待ち時間がいやな方は、当院でのナローバンドUVB 治療をぜひご検討ください。
3)全身療法
●オテズラ錠 (当クリニックで治療のつかっています) オデズラ錠は乾癬の内服治療薬です。
外用剤や光線治療では効果が不十分なときに併用 する内服剤です。
1日2回の内服で初回の2週間は徐々に薬の量を上げていき、2週間 目から量を固定します。
オテズラ錠の適応ステロイド外用剤を中心とする局所療法等で効果が十分に得られず、皮膚の乾癬症状が体全体の10%以上を占める方、関節の痛み、変形を伴う関節症性乾癬の方が使用できます。
また、これまでは治療が難しかった、頭皮、爪の乾癬にも効果があります。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性、小児は使用できません。
オテズラ錠薬価
薬代は保険診療自己負担3割の場合、最初の2週間(スターターパック使用時)で6,831円、3週目以降は毎月16,632円が目安となります。
時期 | 飲み方 | 日数 | 薬剤費点数 | 薬剤費の窓口負担額 | ||
3割 | 2割 | 1割 | ||||
最初の2週間 | スターターパック | 14日分 | 2277点 | \6,831 | \4,554 | \2,277 |
3周目以降 | 30mg 1日2回 | 28日分 | 5544点 | \16,632 | \11,088 | \5,544 |
もっと知りたい方はアムジェン社のホームページをご覧ください。
※シクロスポリン、レチノイド、メトトレキセート、生物的製剤による治療は当院では行っておりません。
●シクロスポリン(ネオラール)※
乾癬の発症や悪化の原因の1つに免疫作用の過剰な働きがあげられます。シクロスポリンは過剰な免疫作用を抑えるお薬です。
主な副作用として血圧上昇、多毛、腎機能障害などが報告されており、定期的な血圧測定と血液検査が必要です。
●レチノイド(チガソン)※
ビタミンAの誘導体で、表皮の過剰な増殖を抑えます。
胎児に影響を与えるおそれがあるため、服用中だけでなく服用中止後も、男性は6ヵ月、女性は2年の避妊が必要です。
●メトトレキセート(リウマトレックス)※
乾癬には保険適応外であるが、難治性乾癬、特に関節症性乾癬に用いられます。
長期使用では肝機能障害が問題になります。
●生物的製剤※
免疫に関わる物質の働きを弱めて乾癖の症状を抑えるお薬です。
現在、皮下注射と点滴の2種類があります。なお、生物学的製剤による治療は、これまでの治療で効果が見られない患者さんが主な対象となります。以下の製剤があります。()は商品名
- インフリキシマブ(レミケード):TNFα阻害剤
- アダリムマブ(ヒュミラ):TNFα阻害剤
- ウステキヌマブ(ステラーラ):IL-12、IL-23阻害剤
- セクキヌマブ(コンセンティクス):IL-17A阻害剤
- イキセキズマブ(ステラーラ):IL-17A阻害剤
- ブロダルマブ(ルミセフ):IL-17受容体A阻害剤
3.乾癬の種類
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
乾癬の約90%を占めます。
頭部、肘、膝など、こすれやすい部分や刺激を受けやすい部分によく見られ、全身の広がることがあります。
約60%の患者さんには爪にも症状が見られます。
滴状乾癬(てきじょうかんせん)
小さな水滴程度の大きさの皮疹が全身に出現します。
鼻、のど、歯など身体のどこかに細菌の感染病巣が存在し、それが悪化する時に起こることがあります。
とくに扁桃腺炎がきっかけになることが多いです。
乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)
尋常性乾癬が全身の広がり、皮膚全体が赤みを帯びます。
膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)
発熱、倦怠感を伴い、急激に全身の皮膚が紅くなり、膿疱が多発します。
放置すると、全身衰弱などにより重篤な状態になることがあります。
乾癬の病型の中に、発熱、全身倦怠感をともない全身の皮膚に潮紅と膿疱が多発するものがあり汎発性膿疱性乾癬とよばれます。
このタイプの乾癬は重症で、炎症症状が強く尋常性乾癬と病像が相当異なり入院治療を要します。
乾癬の中ではまれな病型で1%程度を占めます。
関節症性乾癬(かんせつしょうせいかんせん)
乾癬ともっている患者さんの10%に関節症状があるといわれています。
皮膚症状に加えて、関節リウマチにように関節がはれたり、痛んだりします。
関節症性乾癬の特徴
- 朝起きたときに手の指が開きにくい
- アキレス腱や足の裏に痛みや腫れがある
- 膝が痛い
- おしりや腰が痛い
- 指の爪に点状に凹みがある、爪が薄くはがれる
- 頭が赤くなっている、フケが多い
関節症性乾癬は治療せずに、放置しておくと関節が変形するなどの障害をきたすので、早めに診断して治療することが大切です。
4.季節により対処法
冬の乾癬の特徴
冬期は乾癬が悪化しやすい季節です。
その原因として紫外線量の減少、乾燥による痒み、痒い部分を掻くことでの悪化(ケブネル減少)があります。
紫外線量
冬は、夏に比べて日照時間が短くなり、紫外線量は減少します。
紫外線は皮膚でビタミンDを合成しますが、このビタミンDは乾癬の病状を抑える成分です。
ビタミンD産生の低下により乾癬の症状は悪化しやすくなると考えられています。
乾燥
冬は湿度が低下して外気が乾燥します。
また、室内では暖房を用いるために、より乾燥しやすくなります。
乾癬の病変部位はもともと乾燥していますが、湿度の低下によりさらに乾燥するようになります。
皮膚の乾燥は痒みを誘発し、痒みで皮膚を掻くことで、乾癬の皮膚病変は悪化します。
症状のない皮膚を掻くと、新しい乾癬の皮疹が出現します。これを「ケブネル現象」とって乾癬の特徴的な症状です。
頭皮に乾癬がある場合、乾燥はフケを増やして見栄えが問題となります。
冬の乾癬対策
乾燥に対して
冬の乾燥対策で、もっとも重要なことは保湿です。
加湿器をなるべく使用します。
乾燥して外気から皮膚を守るために保湿剤を塗ると皮膚の表面からの水分の蒸散を防ぎます。
入浴時は皮膚の脂分を保つために、長時間の入浴を避ける、強力な洗浄剤や目の粗いスポンジ、ナイロンタオルを使わないなどが大切です。
身体は保湿成分を含んだボディーソープを使い、手で洗ってもよいと思います。
頭部の症状があり、フケが多くなった場合、目立たないように上着は明るい布地のものを選ぶとよいです。
治療薬の選択
冬は皮膚のでビタミンD合成が減ることから、ビタミンD3をステロイドの配合剤であるドボベットは有効は選択肢です。
保湿剤はさらっとしたローションタイプより保湿力の強いクリーム、軟膏がよいと思います。