尋常性白斑|新宿 高田馬場 山手皮膚科クリニック

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尋常性白斑

尋常性白斑は皮膚の一部で色素が抜けてまだらになる難治性皮膚疾患です。私は1992年より色素、メラノサイト(色素細胞)の研究をおこなってきました。尋常性白斑は難治性疾患で治療方法がなかったころです。ナローバンドUVBもエキシマライトもなくPUVA療法という紫外線療法がもっとも効果がある時代でした。1999年からは米国国立衛生研究所(NIH)で色素細胞の世界第一人者のVincet J. Hearing博士のもとで働きました。ある日Vincet J. Hearing先生の机の上の書類がちらっと見えて、「マイケル・ジャクソン白斑基金」という文字が目に入りました。先生に尋ねるとジャクソン氏は白斑症でその治療開発のために研究費をもらっていると話してくれました。ジャクソン氏は白斑部以外の肌の色素をモノベンジルハイドロキノンエーテルで脱色したのだとすぐにわかりました。人に喋って訴訟にでもなると怖いので誰にも言いませんでしたが、研究室では知られていたことでした。いまでは周知されていますが。

私は身体の色素細胞がなくて生まれてくる白皮症のメカニズムを研究していました。白皮症のメカニズムはだいだい解明されましたが、尋常性白斑はいろいろな説があって解明には程遠いものでした。現在は数種類の原因に絞られてきています。免疫が関係しているのは確かなようで、ここからの治療のアプローチが有用だということもわかっています。今では数々の外用剤、発展した紫外線治療(ナローバンドUVB、エキシマライトなど)を使い、免疫反応からの治療のアプローチが進んでいます。これからの治療の確立を期待したいです。私のクリニックではステロイド外用剤+紫外線治療を第一選択としています。以下白斑に関して日本皮膚科学会の尋常性白斑診療ガイドラインを参考に新しい知見(JAK阻害剤など)を交え書いています。

治療方法が進化した今でも尋常性白斑は難治性皮膚疾患です。

1.白斑の症状

2.白斑の病型

3.白斑の原因

4.白斑の治療

5.山手皮フ科クリニックの白斑治療

6.診察・治療の流れ

7.ナローバンドUVB・エキシマライト料金

1.白斑の症状

皮膚の色がまだらに薄くなり(不完全脱色素斑)、やがて白いシミのようになっていきます(完全脱色素斑)。この白い状態を白斑といいます。かゆみ、痛みはありません。白斑は次第に拡大、増加、癒合していくことがあります。形や大きさが様々で、境界がはっきりしていて、辺縁の色が濃いことが特徴です。

尋常性白斑は、通称「しろなまず」とも呼ばれ、明らかな原因は不明です。すべての年齢、乳幼児から高齢者まで見られる病気で、皮膚の色の抜ける「色素脱失異常症」の中では代表的なものです。皮膚以外には影響しませんが、美容的に大きな問題となります。

尋常性白斑について詳細に知りたい方は日本皮膚科学会の尋常性白斑診療ガイドラインをご覧ください。

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2.白斑の病型

2012年の尋常性白斑診療ガイドラインでは尋常性白斑を皮膚の分節に沿って白斑がみられる分節型、分節に沿わない非分節型分類不能群の3つに分けています。白斑の大きさや形などから、尋常性白斑は3タイプに分類されます。

※分節:皮膚の表面は下の図に示すように皮膚分節と呼ばれる領域に分けられています。1つの皮膚分節は、1つの脊髄神経根から伸びている感覚神経が支配する領域です。(感覚神経は、触感、痛み、温度、振動などの情報を皮膚から脊髄に伝えます。)脊髄神経根は対になっていて、各対の1つずつが体の右側と左側に対応します。全部で31対あります。この領域に沿って白斑が出現するのが分節型、領域に関係なくばらばらに白斑が存在するのが非分節型となります。

分節型

皮膚の分節に一致して出現し、通常は片側にできます。ごくまれに両側性にでることがあります。尋常性白斑の5~27.9%を占めるとされ、尋常性白斑のなかでも発症年齢が低く、白毛を伴いやすいのが特徴です。顔面に好発し、ほぼ半数が顔面に白斑を生じます。

ほかの好発部位は体幹、頚部ですが、四肢にみられることもあります。通常は活動性がなくなると白斑の拡大は止まりますが、ごくまれに汎発型に進展することがあります。日焼け、外傷、妊娠などで増悪しない傾向にあります(5%程度が悪化)。

非分節型

非分節型・限局型

狭い範囲に一つ、あるいは数個の白斑がある程度のものです。狭い範囲だど分節型か非分節型かわからないことがあります。限局型の約10%後に拡大して分節型に移行するとされています。

腰部の非分節型・限局型の白斑
汎発型(非分節型)

汎発性ではからだのあちこちに出現するので非分節型になります。尋常性白斑の半数以上を占めます。白斑は体幹顔面にもっとも出現しやすく、次いで頚部、手、四肢に多くでます。顔面では前額部から髪の生え際付近にかけてと、目周囲、口周囲に好発します。ベルト圧迫部、腋窩(ワキ)、鎖骨部のような機械的な刺激を受けやすい部分にもできます。外傷を受けた部位にも出現します。日焼け、妊娠が増悪因子となります。

手の汎発型の白斑

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3.白斑の原因

尋常性白斑は単一の疾患ではなく、多種の原因によっておこっている色素脱出症の集まりと考えられます。症候群といってもよいと思います。

原因については様々な仮説が提唱されてきましたが、有力なものとして1)自己免疫説、2)色素細胞自己破壊説、3)神経説、4)生化学説があります。

1)自己免疫説

尋常性白斑には自己免疫疾患の合併が多くみられます。その中では甲状腺疾患が最も多く、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症がみられます。その他、自己抗体性の悪性貧血、アジソン病、糖尿病、副甲状腺機能低下症、重症筋無力症、円形脱毛症が正常人より多くみられます。

皮膚の色を構成するメラニンは皮膚のメラノサイト(色素細胞)でつくられます。からだの免疫が変調をきたし、このメラノサイトに対する抗体が出現したり、メラノサイトを障害するT細胞が出現してメラノサイトが障害され、白斑ができているという説です。非分節型、汎発型ではこれが要因と考えられています。

尋常性白斑の治療にPUVA、ナローバンドUVB、エキシマライトなどの紫外線治療、ステロイド内服治療といった免疫を抑制する治療が有効であることは尋常性白斑が自己免疫性疾患の側面をもっていることを示唆しています。

メラノサイト破壊の自己免疫説

2)色素細胞自己破壊説

メラノサイトでメラニンができる過程は複雑です。最初にチロシンというアミノ酸からたくさんの産生中間代謝物を経て最終的にメラニンが生成されます。この産生中間代謝物(ドーパ、ロイコドーパクロム、ドーパクロム、DHI、DHICA)は色素細胞にとって強い毒性をもっています。通常は色素細胞内でこれら産生中間代謝物を無毒化しているのですが、尋常性白斑の患者ではこの無毒化の過程に異変がおきていて、色素細胞自らが造る代謝中間産物によって自己破壊しているという可能性があります。

ドーパの毒性を1とすると、ドーパクロムは160倍高い毒性を持つ。DHI、DHICAはドーパの1.3倍の毒性を持つ。

3)神経説

精神的なストレスから尋常性白斑が出現すること、ウイルス性脳炎や多発性硬化症の神経疾患で白斑がみられること、分節型では神経の分布領域に発汗の異常がみられることは自律神経バランスの破綻が関与していることを示唆します。末梢神経線維から分泌されている神経伝達物質がメラノサイトを障害していることが考えられています。

また自律神経バランスの異常によりカテコールアミンという物質が血液中に増加すると皮膚の血管の収縮がおこり、局所の活性酸素が増加して色素細胞を障害している可能性もいわれています。

メラノサイト破壊の神経説

4)生化学説

活性酸素は日光暴露、外傷、ストレス、血流障害などで体内に発生するもので、からだには有害で。我々のからだは常にこの有害な活性酸素をさまざまな抗酸化作用をもつ物質で中和、不活化しています。尋常性白斑の皮膚ではこの抗酸化物質の量がなんらかの原因で低下していて、活性酸素による酸化ストレスで色素細胞が障害を受けているという説があります。

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4.白斑の治療

尋常性白斑診療ガイドラインでは治療目的として以下のことを目指しています。

  1. 100%の色素再生を目指す
  2. 良好なカラーマッチを獲得する
  3. 再生した色素の色調はできるだけ淡くしコントラストをつけない
  4. 再燃を生じない
  5. 通院頻度を少なく治療期間を短くする
  6. 副作用を生じない
  7. 日常生活に支障をきたさない状態にする
尋常性白斑診療ガイドラインに記載されている白斑の治療法(効果があるものを抜粋)
治療法 非分節型
(汎発型)
分節型 ガイドライン推奨度 保険適用
外用剤 ステロイド外用剤 AないしB
タクロリムス軟膏 B  
活性型ビタミンD外用剤 単独使用で△ C1-C2  
JAK(ジャック)阻害剤 ○? ?2012年になかった薬  
紫外線療法 ナローバンドUVB両方 B
エキシマライト C1
PUVA療法 B
その他 植皮・外科手術 A-C1  
カモフラージュメイク ○(コントラストなくす) C1  
脱色療法 ○(コントラストなくす) C1  

※ガイドライン推奨度

A おこなうように強く勧められる
B おこなうように勧められる
C1 おこなうことを考慮してもよいが、十分な(臨床試験や疫学研究の)根拠がない
C2 (臨床試験や疫学研究の)根拠がないのですすめられない

外用療法

ステロイド外用療法(推奨度AないしB)

体表面積が10~20%以下の白斑においてはステロイド外用剤が第一選択となります。汎発型ではステロイド外用剤単独での効果は高くはありません(20%以下)。

ステロイド外用剤とPUVA療法かナローバンドUVB療法、エキシマライトを組み合わせる治療となります。長い時間が経過して固定した症状だと効果は期待できません。

タクロリムス軟膏(推奨度B)

タクロリムス軟膏も白斑への保険適用はありませんが、多くの皮膚科で使われてます。

1日2回の外用をおこないます。

タクロリムス軟膏

タクロリムス軟膏(保険適用なし)

活性型ビタミンD3誘導体マキサカルシトール軟膏(推奨度C1-C2)

活性型ビタミンD3外用薬は白斑への保険適用はありませんが、多くの皮膚科で使われている治療法です。タルカシトール、マキサカルシトール軟膏といった外用剤です。

PUVA療法、ナローバンドUVB療法、エキシマライトを組み合わせる治療となります。

活性型ビタミンD3誘導体マキサカルシトール軟膏

活性型ビタミンD3誘導体マキサカルシトール軟膏(保険適用なし)

JAK(ジャック)阻害剤(デルゴシチニブ軟膏)(推奨度?)

いろいろな免疫反応が白斑の形成に関与していることは間違いありません。白斑の治療に特定にサイトカインや成長因子に関連して細胞シグナルを抑制することが治療につながると考えられていて、JAK阻害剤の有効性が報告されています。JAK阻害剤外用剤でデルゴシチニブ軟膏(コレクチム軟膏)はアトピー性皮膚炎の治療につかわれています。海外では内服のJAK阻害剤が白斑に有効であると報告されています。白斑の治療には保険適用がありません。2012年のガイドライン作成時にはなかった薬で推奨度は?としています。

※サイトカイン:細胞から放出されて,免疫作用・抗腫瘍作用・抗ウイルス作用・細胞増殖や分化の調節作用を示すタンパク質の総称。インターロイキン,インターフェロンなど。
※成長因子:体内において、特定の細胞の増殖や分化を促進する内因性のタンパク質の総称。様々な細胞学的・生理学的過程の調節に働いており、標的細胞の表面の受容体タンパク質に特異的に結合することにより、細胞間のシグナル伝達物質として働く

デルゴシチニブ軟膏

デルゴシチニブ軟膏(保険適用なし)

光線療法

ナローバンドUVB(推奨度B)

3%以上の非分節型(汎発型)の白斑の治療では第1選択となります。白斑治療では63%で有効とされています。319~313ナノメートル(nm)の非常に幅の狭い波長(ナローバンド)の中波長紫外線のみを照射することができ、有害な紫外線がカットされています。

ブロードバンドUVB治療と内服PUVA療法では紫外線の発がん性が問題となりますが、ナローバンドUVBを治療に使うことによって、紫外線の害を最小限に抑えて、安全で高い治療効果を発揮することができます。治療頻度は週1~2回、治療期間の目安は3か月以上9か月未満とするのが一般的です。

※ナローバンドUVB治療を保険適用です。詳しくはナローバンドUVB療法をご覧ください。

ナローバンドUVB治療器
治癒過程の白斑。色素がまだら状に新生しています。
エキシマライト(推奨度C1)

エキシマライトは紫外線治療器ではもっとも最近に開発された機器です。白斑部分以外の正常は皮膚をなるべく照射しないように設計されていて、「ターゲット型治療器」と呼ばれます。照射面積が小さいので狭い範囲の白斑の治療に使い、広範囲な白斑の治療には適していません。限局性の白斑の治療には効果的な治療法です。

波長309~313nmの光を照射するナローバンドUVB治療器とは異なり、より効果の高いと考えられる308nm付近の紫外線に限局して照射します。PUVA療法、ナローバンドUVB、エキシマライトのなかで色素再生能力(治療効果)はエキシマライトがもっとも優れています。それなのに、ナローバンドUVB(推奨度B)より低い推奨度C1というのは新しい機器で十分な臨床試験や疫学研究の論文がでていないためです。

治療器の歴史が短く、紫外線の影響(とくに発がん性)は明らかではありません。これまでエキシマライトで癌が発生した例はなく、紫外線発がんを考える場合、日常の浴びている直射日光の危険性のほうが大きいといわれています。

週1~2回の治療をおこない、20~30回照射した段階で色素再生の有無を評価して、その後の継続治療を検討するのが一般的です。

エキシマライトUV308

エキシマライトUV308は、尋常性白斑を治療する最新の紫外線治療器です。当院では顔、手足などの限局して白斑に使用しています。

※治療は健康保険適用です。

エキシマライトUV308

エキシマライトUV308の照射野はアダプターを使用していろいろな大きさに対応します。顔面、手などの小さい面積の白斑を治療するのに適しています。

PUVA療法(推奨度B)

オクソラレン(紫外線の増感剤)を白斑部に外用した後、あるいは内服した後、長波長の紫外線(UVA、紫外線A波)を照射する方法です。長い歴史があり、内服PUVA療法により白斑治療では51%が有効であったという報告があります。長波長紫外線(UVA)を照射するために、長期治療では紫外線による皮膚の萎縮、将来の発がんが心配され、現在は後述するナローバンドUVBによる治療にかわってきています。

※当院ではPUVA療法はおこなっていません。

ナローバンドUVB、エキシマライト(エキシマレーザー)費用
項目 点数 自己負担額(30%)
ナローバンドUVB/エキシマライト 340点 ¥1,020

※「皮膚科光線治療」の中波紫外線療法(308ナノメートル以上313ナノメートル以下に限定したもの)に相当します。

全身療法

ステロイド

白斑がどんどん進んで拡大している状況で使用します。内服や点滴で短期で使用しますが、ステロイドにより全身の副作用に気をつける必要があります。

※当院ではおこなっていません。治療に際しては近隣の中核病院皮膚科を紹介いたします。

外科手術

分節型では吸引水泡形成法による表皮移植が有効で第一選択となります。このほか、点状皮膚移植や薄い分層皮膚移植も有効です。現在、自己培養表皮の移植治療も研究されています。

※当院では皮膚移植治療はおこなっておりません。

カモフラージュメイク

外見に影響する皮膚露出部の白斑では化粧によるカモフラージュメイクがおすすめです。私はマーシュ・フィールド社の白斑用ファンデーションをすすめています。

マーシュ・フィールド社は、まだレーザー治療がなかった時代から白斑、太田母斑などの青あざ、血管腫などの赤あざを隠すカバーマークを研究開発されていた老舗メーカーです。マーシュ・フィールド社は私がとても信頼している会社です。

白斑用ファンデーションのサイト http://lp.marsh-field.jp/hakuhan/

脱色素療法

成人の広範囲な尋常性白斑で、治療の反応せず、広範囲は白斑が長期間持続し、カモフラージュメイクによってもQOL(生活の質)が改善しない場合、全身の色を抜くという選択肢も存在します。ハイドロキノンモノベンジルエーテルという薬剤は色素細胞を破壊して、皮膚の色を永久的に脱色します。正常皮膚の色素を無くすことで、白斑部位とのコントラストをなくす方法です。色素が抜けた部分では紫外線の影響がでて、皮膚がんの発生頻度が増します。日本では保険適用もありませんし、おこなわれていません。

白斑の経過

尋常性白斑の治療で効果があれば、毛包一致性の色素再生がみられます。また、治療を受けなくても色素再生がみられる場合があり、その頻度は10~50%の間であろうと推測されています。治療をおこなった場合では面積で75%以上の色素再生がみられた場合を効果ありと判定すると、汎発型では紫外線治療により白斑患者の50%以上で色素再生がみられたという報告があります。定期的に照射した場合ほうが、不定期に照射するより効果が高いという報告になっています。限局型では紫外線照射よりステロイド外用のほうが効果が勝っていたとする報告があり、体表面積の20%以下の白斑では55%の白斑患者で効果があったという報告があります。

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