更新日:2023.10.29/公開日:2017.2.23
このコンテンツは山手皮フ科クリニック 院長 豊福一朋が100%オリジナルで書いています。院長経歴はこちらをご覧ください。
1.そばかす(ソバカス)雀卵斑(じゃくらんはん)とシミの基本知識と治療
- そばかすとシミの違いとは
- シミ、そばかすが出来る原因とその仕組み
- シミとそばかすの種類と特徴 肝斑、そばかす、色素斑、老人性など
- Qスイッチレーザー
- ピコレーザー
- フォトフェイシャルなどのIPL(光治療)
- QスイッチレーザーとIPL(光治療)の効果比較
- そばかすとシミの治療ではどのように機器を選択するか
- Qスイッチアレキサンドライトレーザー
- IPL(光治療)フォトフェイシャルM22
- そばかすとシミのレーザー治療のながれ
- 診療内容
3.山手皮膚科クリニックでのそばかす(ソバカス)治療について
- そばかすとシミを取った後、再発を防ぐ方法
- なぜそばかすとシミは再び出てくるのか?
- 一度出来たそばかすとシミは治せるのか?
- そばかすとシミ取りレーザーは痛いのか?
- そばかすとシミ取り後のダウンタイムはどの程度か?
- ピコレーザーとの比較は?
- 各治療法の取り扱い範囲は?
1.そばかす(ソバカス)、雀卵斑(じゃくらんはん)とシミの基本知識と治療
このページではそばかす(ソバカス)にお悩みの方へ、基本的な知識と治療方法に関してご説明いたします。
そばかすとシミの違いとは
そばかすとは
映画などに出てくる白人の子供には、そばかすが多いですね。このようなそばかすは医学用語では「雀卵斑(じゃくらんはん)」といわれます。点在する色素斑がスズメの卵の表面様であることからきています。
後述するシミ(老人性色素斑や脂漏性角化症)は紫外線による皮膚の細胞の遺伝子変化が原因とわかっていますが、そばかすの原因はわかっていません。
アイルランド人の赤毛とそばかす
私はカナダ、米国でメラニンの研究をおこないましたが、研究者の間では「アイルランド人の赤毛(Irish Redhead)」の話は有名です。赤毛の人にはそばかすも多く、この話がそばかすの原因ともつながります。
そばかすは毛髪が赤毛、ブロンドの白人に多いとされ、ヨーロッパでも北に行くほど多くなります。北欧、アイルランドあたりがもっとも多いといわれています。アイルランドでは10~30%程度が赤毛でそばかすが多くの人に見られます。ヨーロッパ以外では赤毛になる人の割合は0.06%ですから、アイルランドでの10~30%の赤毛の比率は高いといえます。そして以前から赤毛とそばかすは遺伝子に関係があると考えられています。
実際に赤毛の原因はメラニン生成に関与する遺伝子(メラノコルチン-1受容体)に変異があることが明らかになっています。そばかすにもメラノコルチン-1受容体遺伝子が関係していると考えられています。赤毛は昔、北に住んでいた白人におこった遺伝子の変異から始まります。皮膚や髪の毛の色をつくるメラニン産生に関する遺伝子に突然変異が起こったとが考えられます。外界との交流が少なくかつ狭いコミュニティーではこれらの遺伝子変異は蓄積して保持されていきます。アイルランドでは昔から住んでいたケルト人の間でこれが起こり、現在まで保持されていると考えられています。ちなみに小説「赤毛のアン」の主人公アン・シャーリーにはそばかすが多いと描かれていますが、彼女はアイルランド系で間違いないと思います。小説の舞台となったプリンス・エドワード島にはアイルランド移民が多く、アイルランドのことわざや迷信、アイルランドの歴史上の人物が登場します。私もアイルランドの首都ダブリンにいったことがありますが、赤毛の人が多いと思いました。
白人のそばかすと日本のは症状の出方と推移が違うので同じものとは考えませんが、日本人のそばかすにも遺伝子変異が関係してると考えられています。そばかすがある人は色白の人が圧倒的に多いのと、両親、兄弟姉妹にも頻繁にそばかすが見られるからです。遺伝子は単一の遺伝子の変化ではなく、様々な遺伝子複合した変化からそばかすができているのでしょう。赤毛に関係するメラノコルチン-1受容体遺伝子異常は常染色体劣性遺伝(両親ともに変異遺伝子をもっている場合に赤毛になる)ですが、日本人でのそばかすは常染色体優性遺伝と考えられています。そばかすが多い人では両親いずれかにそばかすが多いことも常染色体優性遺伝と考える理由です。
日本人のそばかす
白人のそばかすは「夏季に多くなり、また数も多くなり、色も濃くなる。冬季には小さくなり、数も減少し、色も薄くなる」、「成人(30歳)以降、徐々に消退する傾向がある。」とありますが、日本人では、このようはそばかすはありません。
日本人でもそばかすは夏季と冬季で若干の色調の差がありますが、これはそばかすがない部分でも同様に起こり、日差しによる通常の皮膚の色の変化によるものだと思っています。また、成人以降、数色調が減ることはなく、むしろ数が増加していくことが多いと思います。
したがって、日本人のそばかすは白人のものとは異なるのかもしれません。しかし、家族内でそばかすが多い人がみられることから遺伝があることは間違いないと思います。
シミとは
みなさんは、シミにはたくさんの種類があるのをご存知でしょうか。
一般にいう「シミ」は老人性色素斑や脂漏性角化症です(狭義のシミの定義)。ほかに広範囲に濃い色素の増強がみられる肝斑や、太田母斑や後天性真皮メラノーシス(ADM)をシミに含めることもあります(広義のシミの定義)。
老人性色素斑は長年の紫外線による皮膚のダメージで表皮の角化細胞やメラニン細胞(色素細胞)が遺伝子異常をおこしてできるものです。このなかで多発する小型の老人性色素斑はそばかす型日光色素斑とも呼ばれ、そばかすとの鑑別が難しいことがあります。
脂漏性角化症は長年の紫外線暴露、加齢によってできる、盛り上がったシミです。皮膚から盛り上がるので皮膚腫瘍として分類されることもあります。
後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)はそばかすの似ていることがあり、治療に用いるレーザーの反応がそばかすと異なるので、鑑別が重要となります。
そばかすとよく似た色素斑(シミなど)
後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)
頬の両側にこのような小さな色素斑がパラパラと散らばっているとそばかすと間違われて診断されていることがあります。
原因は真皮に存在する真皮メラノサイトが原因です。通常は真皮にはメラニン産生するメラノサイトはないか、あってもメラニンを産生していません。
後天性真皮メラノーサイトーシスについてはこちらをご覧ください
そばかす型の老人性色素斑
一見、そばかすに似ています。20歳後半に出現し、鼻にあまりないことからそばかす型の老人性色素斑と診断しました。
幼少期には色素斑がなかったことがそばかすと異なります。
紫外線による皮膚の加齢によるシミです。中学、高校、大学での野外活動で紫外線にあたる時間が長かった人にでる傾向があります。
そばかす、シミが出来る原因とその仕組み
紫外線等による肌へのダメージ
太陽光が皮膚にあたると、皮膚の表面の角層で5~10%が反射されます。それから皮膚のメラニンに散乱、吸収されます。皮膚の角層の最下部である基底細胞層に届くのはわずかで、その下の真皮にはさらに少ない量が届きます。紫外線ではUVBはほとんどが表皮までしか到達せず、真皮まで到達するのは10%程度です。UVBは細胞のDNAに変異を起こします。DNAの変異はすぐに酵素によって修復されますが、からだ側はつねに大量の変異を修復する過程でまれに修復エラーがおこります。この修復エラーが遺伝子の傷となって、細胞に変化をおこします。
UVAは波長が長く、真皮まで到達します。UVAはおもに真皮の劣化を起こします。真皮の線維芽細胞を老化させて、細胞外マトリックス(コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などかならる基質の劣化させます。
これらの変化が、シミ、シワ、たるみなど皮膚の老化を招きます。長期にわたる紫外線暴露は皮膚がんの発生要因にもなります。
シミ(老人性色素斑)場合
シミの代表である老人性色素斑では、紫外線によりメラニン細胞(メラノサイト)、表皮基底細胞に異常(形質転換)がおこります。最近では線維芽細胞の老化も一因であるとわかってきています。
皮膚が長期にわたり紫外線を浴びると、表皮のメラニン細胞に異常がおこり、メラニン色素(以下、メラニン)を過剰の産生するようになります。これをメラニン細胞の形質転換といいます。
さらに角層をつくる表皮基底細胞も形質転換をおこし、メラニン細胞を活性化する因子(インターロイキン1α、MSH)を常に産生するようなります(表皮基底細胞の形質転換)。活性化したメラニン細胞は絶え間なくメラニン産生を続け、角層には過剰なメラニンが蓄積します。
老人性色素斑では、おそらくメラニン細胞、表皮基底細胞の両方に形質転換がおこっているので、治療にはレーザーで双方を破壊する必要があります。
さらに、紫外線により真皮に老化がおこると、老化した線維芽細胞からメラニン細胞を刺激する物質が表皮にむけて分泌されメラニンの過剰産生がおこることもわかってきました。
レーザーは真皮にも熱を与えるので、真皮の「リモデリング」がおこり、老人性色素斑の再発を予防します。
他院での治療ですが、老人性色素斑を数回にわたって治療するところがあります。これは、レーザーを用いても老人性色素斑の治療が難しいことを意味しています。表皮基底細胞、メラニン細胞、老化線維芽細胞の3つの同時に取り除く必要があるかでしょう。
真皮の「リモデリング」とは(▶をクリっく)
- 真皮は線維芽細胞、マクロファージ、肥満細胞、血管、神経からなる「細胞成分」とコラーゲン、エラスチン、基質(ヒアルロン酸など)からなる「間質成分」の2つに分類されます。細胞外マトリックスとは生体内で細胞を取り巻いている物質の総称ですが、真皮ではコラーゲン、エラスチン、基質(ヒアルロン酸など)が「(真皮の)細胞外マトリックス」と呼ばれます。細胞外マトリクスは皮膚の弾力性の維持、水分の保持をおこなっています。 皮膚が長期に紫外線にさらされることで、細胞外マトリクスは劣化して、皮膚の弾力性が低下して、乾燥傾向になります。「細胞成分」である線維芽細胞は紫外線老化します。老化した線維芽細胞は表皮のメラニン細胞にむけて、異常なシグナルの伝達をおこなうようになります。このシグナルでメラニン細胞は過剰なメラニンを産生し、大量のメラニンは角化細胞へ受け渡され、角層のメラニン量が増えシミとなります。レーザー、RF(高周波)、超音波などを使って真皮に熱凝固をおこすと、からだは皮膚のダメージと受け取り真皮の線維芽細胞を活性化させて、老化した線維芽細胞は新しい線維芽細胞に置き換わります。そしてメラニン細胞へのシグナル伝達が正常化します。この過程を「皮膚のリモデリング(再構成)」と呼び、美容医療での皮膚の若返りの原理です
そばかすの場合
そばかすでは、メラニン細胞が過剰なメラニンを産生することが原因です。紫外線が関係していることは間違いないのですが、メラニン細胞自体に異常がおこっているかは不明です。レーザー治療では老人性色素斑よりも弱い出力で効果がでることから、角化細胞の形質転換はおこっていないと思います。
治療にはメラニン細胞のみをターゲットとして治療すればよいので、安定した治療効果を得ることができます。
2.そばかす(ソバカス)治療でどのような機器を選択するか
皮膚科、美容皮膚科、美容形成外科のホームページでそばかす治療をみると、じつにさまざまな治療方法が記載されています。
そばかす治療によく用いられるレーザーとIPL(光治療)の機種
レーザー | IPL(光治療) |
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それゆえ、「そばかすの治療ではなにがベストか」という質問はよくいただきます。
シミ・そばかす治療をはじめ、美容にかかわる治療はクリニック、医師で違いがあります。皆さんご自身のポリシーで治療しているので、どの治療方法がベストかは一概にいうことはできません。また、「シミ・そばかすが少しでも薄くなれば良い」、「完全に消したい」など治療を受ける側のニーズもさまざまですので、一般論としてどれがベストかを論じるつもりはありません。
このサイトでは私、豊福一朋がこれまでの経験とIPL、レーザーの作用機序や治療原理などを踏まえて、私見として述べさせていただきます。
Qスイッチレーザー | ピコレーザー | IPL フォトフェイシャルなど |
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694/755nm ルビー/アレキサンドライト |
1064nm Nd:ヤグ |
532nm | 755nm アレキサンドライト |
1064nm Nd:ヤグ |
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◎ | △~○ | ◯ | ◯~◎ | △~○ | △ |
Qスイッチレーザー
そばかすはQスイッチレーザーの治療1回で完全に消えるので、これ以外に選択肢はないとおもっています。
Qスイッチレーザーにはアレキサンドライト、ルビー、Nd:ヤグの3つのレーザーがあります。
アレキサンドライト、ルビー、Nd:ヤグの波長は694nm、755nm、1064nmです。そばかす治療での効果の差はレーザーの波長とメラニンの吸収度で決定します。
メラニンの吸収度ではルビー、アレキサンドライト、Nd:ヤグの順で、そばかすの治療効果はこの順番です。実際の治療では、ルビー、アレキサンドライトともにそばかす治療での反応は高く、同程度の治療効果をもっています。
一方、Nd:ヤグはメラニンへの吸収度が低く、効果が低いことがわかります。
Qスイッチアレキサンドライトレーザーでのそばかす当院治療例
上記写真をクリニックすると拡大画像がご覧いただけます。
ピコレーザー
ピコレーザーは刺青(タトゥー)の除去に開発されたレーザーです。ピコレーザーの波長は532nm、755nm、1064nmの3種類があります。
ピコレーザーの波長で532nmはもっともメラニンへの吸収がよく、シミの治療適してます。ほかに酸化へモブロビンへの吸収が高いので、照射時に内出血がおこりやすいのが弱点です。
ピコレーザーでアレキサンドライト755nmの波長をもつものは、そばかすの治療に適しています。Qスイッチレーザーと同等の治療効果があります。
1064nmはNd:ヤグのレーザーとなります。メラニンへの吸収度が低く、そばかすを治療した場合、1回ですべては消えません。数回の照射をおこないます。複数回の治療で色むらがおこりやすく、シミ・そばかすの治療には適さないと考えています。
フォトフェイシャルなどのIPL(光治療)
フォトフェイシャルに代表されるIPLでは、そばかすを薄くすることが可能です。
IPLはレーザーと比較してダウンタイムが軽いことは最大の利点と思っています。欠点はIPL単独ではそばかすは消えないことです。当院にそばかす治療でいらっしゃる患者様は、他のクリニックでIPL治療を受けられた方もいます。そのクリニックでは「○○回施術すれば、そばかすは消えますよ」といわれたそうですが、IPLでは何回治療をおこなっても、そばかすが”消える”ことはありません。
アキュチップはIPLで発生する光線を小さい面積に集中させてシミ・そばかすを治療する方法です。通常のIPLより効果があり、消えるシミ・そばかすはありますが、再発も多くみられます。
QスイッチレーザーとIPL(光治療)の効果比較
QスイッチレーザーとIPLの色素性疾患、美肌、赤ら顔治療での効果比較表
私はそばかすを消すのに、長年Qスイッチ・アレキサンドライトレーザーを使用しています。また、クリニックにはQスイッチ・レーザールビーもあります。ピコレーザーは購入していません。理由はピコレーザーは入れ墨(タトゥー)の治療では圧倒的にQスイッチレーザーよりも優れているものの、シミ・そばかす治療では優位性が認めにくいからです。実際、シミ・そばかす治療でQスイッチレーザーよりピコレーザーが優れているかどうかでは、さまざまな意見があり結論は出ていません。結果※がでるまで様子をみています。
※学会や論文では、これまでシミ治療において、ピコレーザーがQスイッチレーザーより優れているという報告が出ていません。むしろ、最近ではシミ治療ではQスイッチレーザーの方がシミ治療効果において”確か”であるという意見が増え始めています。
ここでは、Qスイッチレーザー(アレキサンドライト、ルビー)とフォトフェイシャルなどのIPL(Intensive Pulse Light)での効果を比較してみます。
効果 | Qスイッチレーザー | IPL(アキュチップなども含む) |
そばかす | ◎ | △(アキュチップでは〇) |
老人性色素斑 | ◎ | △ |
脂漏性角化症 | ◎ | × |
肝斑(かんぱん) | × | △~◎※ |
くすみ | △ | ◎ |
美肌効果 | △ | ◎ |
赤ら顔 | – | 〇 |
※ △の理由はIPLで顔の色素斑(シミ、そばかす、肝斑)を治療する際に、シミ治療モードでの照射をおこなった場合、肝斑が悪化することが多いからです。肝斑に用いるためには適切な波長のフィルターを用いて、出力を調整して照射して◯~◎となります。このモードではシミ治療の効果が弱くなるのが欠点です。
IPLの重要性
上の表ではフォトフェイシャルを含むIPLは色素性疾患の治療には、物足りないように見えます。しかしIPLは当院ではシミ・そばかすのレーザー治療できれいに仕上げるためににはとても重要な機器です。
当院ではフォトフェイシャルをそばかす治療前のプレトリートメントとしておこないます。シミ・そばかす治療をおこなう時に注意しないといけないのは、「肝斑」と「くすみ」です。肝斑が濃い状態、くすみでは表皮にメラニンが増えた状態で、レーザー治療効果を妨げます。照射したレーザーが表皮のメラニンに吸収されて、シミ・そばかすの原因となるメラニン細胞に届きにくくなるからです。「肝斑」と「くすみ」をレーザー治療前にフォトフェイシャルで改善してから、シミ・そばかすのレーザー治療おこなうのが当院の治療の特徴でもあります。
そばかすの治療では他にどのように機器や治療方法を選択するか
レーザートーニングについて
レーザートーニングはそばかす治療に向いていないと思っています。
レーザートーニングはQスイッチ・Nd:ヤグレーザーの照射エネルギー密度を低くしたもの(「低フルエンス」と呼ばれます)で、顔全体に照射するとシミや肝斑がうすくなるとの宣伝文句でたくさんのクリニックでおこなわれています。最近はピコレーザーを低フルエンスで照射することもおこなわれているようです。
レーザートーニングは低フルエンスなので、ダウンタイムが少ないとうたわれています。しかし、ダウンタイムが少ないとうことは治療効果も少ないということです。
そばかすの治療でレーザートーニングと何回もおこなっているようですが、レーザートーニングでそばかすが薄くなることはあっても、消えることはありません。また、短い間隔で繰り返しNd:ヤグレーザーを照射すると、低出力であっても正常なメラニン細胞が傷んでしまいます。そばかす、シミ、肝斑でレーザートーニングを繰り返し治療される方にはまだら、不均一に色抜けしている方を多く見ます。
そして、Nd:ヤグレーザーの1064nmの波長は、アレキサンドライトの755nm、ルビーの694nmにくらべてメラニンへの吸収性が低いです。あえてNd:ヤグレーザーをそばかすの治療に使うのはいかがなものでしょうか。
ピーリングについて
ピーリングは肌表面に蓄積した古い角質を剥がれやすくする薬剤を塗り、肌のターンオーバーを促す施術です。
施術により肌のターンオーバーが促進されることから、皮膚の組織に蓄積されていたメラニン色素が徐々に排出されていきます。
そばかすでは、原因となる表皮のメラニン細胞(メラノサイト)から過剰に産生されるメラニンが、角化細胞に受け渡されて、角層蓄積してそばかすの色をつくっています。
ピーリングでは角層を化学的にはがすので、角層のメラニン量は減り、そばかすが薄くなります。残念ながらそばかすを消すまでにはいりません。
そばかすの原因細胞を除去できないので、ピーリングを止めると、しばらくして元通りのそばかすの色調の戻ります。
イオン導入について
イオン導入は、皮膚に弱い電流を流すことによって電気の勾配(片側プラス、もう片方をマイナスにする)をつくり。イオン化された物質を皮膚に浸透させる方法です。
ビタミンC誘導体がイオン導入では使用され、ビタミンC誘導体は皮膚の奥深くに浸透し、そこでビタミンCに変換されます。
ビタミンCは表皮メラニン細胞(メラノサイト)のメラニン産生を抑制します。すでに存在するメラニンの色も薄くします。
ピーリングと同様にそばかすの原因細胞を除去できないので、消すことはできません。イオン導入を止めると、しばらくして元通りのそばかすに戻ります。
エレクトロポレーションについて
エレクトロポレーションは特殊な電気パルスを利用して、瞬間的に肌層に孔をあける方法です。
この穴から、美肌、美白の有効成分を皮膚の真相まで浸透させることができます。
ビタミンC誘導体はもちろん、イオン導入では浸透させることができなかったトラネキサム酸などの浸透が可能です。
ビタミンC誘導体やトラネキサム酸は美白成分なので、そばかすを消すことはできませんが、薄くすることは可能です。
施術を止めると、しばらくして元通りのそばかすに戻ります
ハイドロキノン(HQ)について
ハイドロキノンは、1940年台から米国で美白剤として使われはじめ、現在では世界中で美白・美肌治療に使われている歴史の長い安全性が確立された美白剤です。
ハイドロキノンはつぎの3つの効果で美白剤として高い効果を持っています。
- メラニンを合成するtyrosinase(タイロシネース/チロシナーゼ)という酵素の活性を抑制する。
- 過剰なメラニンを産生する異常なメラニン細胞を破壊する。
- メラニンの凝集したメラノソームを分解する。
これらの作用によりメラニン色素が生成されにくくなり、そばかすの色は薄くなります。しかし、そばかすを消すまでにはいたりません。
そばかすの場合、顔の広範囲に外用する必要がありますから、結構な量をつかうことになります。
副作用としては、刺激感、接触皮膚炎に注意が必要です。
外用を中止すると、しばらくして元のそばかすの色調に戻ります。
内服薬について
そばかすを薄くする内服薬としては、肝斑のホームケア(セルフケア)に使われるビタミンCやトラネキサム酸があります。
ビタミンCやトラネキサム酸は理論的に美白成分ですが、内服で効果があるかについては疑問です。
3.山手皮膚科クリニックのそばかす(ソバカス)治療について
当院のそばかす治療の特徴はそばかすをQスイッチレーザー1回の照射で全部消します。
綺麗にそばかすを消すために、Qスイッチレーザーの治療前に2回のフォトフェイシャルによるプレトリートメントをおこないます。
Qスイッチレーザー
当院のそばかす治療では、Qスイッチアレキサンドライトレーザーを使用しています。
Qスイッチアレキサンドライトレーザーは50ナノ秒という非常に短い時間(1ナノ秒 = 1/1,000,000,000秒)でレーザーを発振(照射)することができるため、標的組織に限局した治療が可能となります。
効果的な出力(エネルギー)を用いることで、そばかすの原因となる「メラニンを過剰に蓄積した原因細胞」のみを熱破壊することができます。
そばかすの原因となる「メラニンを過剰に蓄積した原因細胞」がレーザー照射により熱破壊されるため、レーザー照射で消えたそばかすの再発はありません。
Qスイッチ・アレキサンドライトレーザーは開院以来使っていて、現在のは2代目です。使い慣れていて重宝しています。
最近はQスイッチ・ルビーレーザーも購入しました。そばかすへの効果は同じでアレキサンドライト、ルビーとも1回でそばかすを消します。
くすみが強い場合は、最初にQスイッチアレキサンドライトレーザーを使えないため、フォトフェイシャルM22という光治療(IPL)をおこなってから、レーザー治療をおこないます。くすみが治療のさまたげになる理由は次の「フォトフェイシャル(IPL)によるプレトリートメント」に書きました。
Qスイッチ・アレキサンドライトレーザーについての詳細はQスイッチアレキサンドライトレーザーをご覧ください。
Qスイッチ・ルビーレーザーについての詳細はQスイッチ・ルビーレーザーをご覧ください。
フォトフェイシャル(IPL)によるプレリートメント
プレトリートメントは表皮でのレーザーの減衰を軽減する
そばかすのレーザー治療では皮膚がくすんでいるときれいな治療結果を得ることができません。
そばかす治療に使うレーザーはアレキサンドライト、ルビーレーザーです。それぞれ755、695nm(ナノメートル)の波長でメラニンに吸収されやすい性質をもっているので、シミ・そばかすなどの色素性疾患の治療の使用されます。
レーザーを照射すると、ある一定の割合で表皮のメラニン細胞に吸収され、残りが表皮基底層(表皮の一番下の層)にあるそばかすの原因となるメラニン細胞まで到達します。
そばかすの原因となるメラニン細胞は大量にメラニン(色素)を産生しています。レーザーはメラニンに吸収され、熱に変換されて瞬時に超短時間の間、高温となり熱は細胞にまで伝わります。そしてそばかすの原因細胞は破壊されます。こうして原因細胞がなくなり、そばかすが消失します。なお、正常なメラニン細胞(下図には記載していません)はメラニン産生量が多くないのでレーザーで破壊されにくく残ります。また、正常のメラニン細胞の一部が破壊されても、あらたに正常なメラニン細胞がほかの場所から移動してきて空白を埋めます。そばかすの原因となるメラニン細胞があった場所も、正常なメラニン細胞が移動してきて置き換わります。
くすんでいる皮膚ではレーザーの効果が弱くなる
皮膚がくすんでいる状態では、表皮のメラニンが増加しています。レーザーを照射すると、レーザーの一定量が表皮のメラニンに吸収されてしまいます。レーザーは減衰してそばかすの原因細胞がある表皮基底層に届きます。減衰のためにすべてのそばかすの原因細胞に十分なレーザーのエネルギーが行き届かなかった場合、治療効果は弱くなります。また、そばかすの原因細胞はある部分は破壊され、ある部分は残ります。そうすると、治療後にそばかすがまだらに残ってしまいます。
したがって、そばかすのレーザー治療前のフォトフェイシャルによるプレトリートメントは十分な治療効果ときれいな治療結果を得るために必要な前準備です。
プレトリートメントはきれいに仕上げるのに大切です
プレトリートメントは治療が終わってのそばかすがあった部位となかった部位のコントラストの差を減らす意味でも重要です。
くすみがある状態でそばかすのレーザー治療をおこなうと、レーザーが当たった部位はそばかすがなくなり、きれいなくすみのない皮膚になります。照射していない部分のクスミとコントラストがついてしまいます。
そばかすとシミのレーザー治療のながれ
治療開始までに2回のご来院が必要です。当院は方針として、全てのレーザー治療、美容施術において初診での来院時に治療をおこなうことはありません。改めてご来院いただくこととしております。
● 過去に当院にて初診・初回相談または治療をお受けになられたことがある患者様において、初診または最終治療のいずれか直近の日付から1年を経過している場合、再度初診の診察から治療開始または治療再開となります。
予約
診察はすべてWEBからご予約をお取りいただく予約制です。クリニック受付ならびにお電話では予約の受付はいたしておりません。
「予約サイト」へいき、選択メニューボタン
から 「顔の「シミ・ソバカス・脂漏性角化症」のご相談 を選択ください。
①初診・初回相談(来院1回目)・再相談
- 初回相談料は3,300円です。
- 再相談は『院長外来』の対象メニューです。『当院が2回目以降の方』→『シミ・ソバカス・脂漏性角化症※再相談』の項目でご予約ください。自費診察料は1,650円です。カウンセリングにて治療方法と費用のお見積りをいいたします。後日の治療となります。
撮影
②プレトリートメント
- 予約をおとりいただき、後日の治療となります。電話またはクリニック受付にてご予約を承ります。
- フォトフェイシャルによる治療では
③レーザー治療
- 予約をおとりいただき、後日の治療となります。電話またはクリニック受付にてご予約を承ります。
洗顔
お化粧や日焼け止めはメイク落としと洗顔フォームを使用して完全に落としていただきます。
麻酔
クリーム麻酔と神経ブロック注射を併用します。麻酔に注射では針の刺入部位に針の大きさの点状の内出血がおこります。
眼瞼では皮膚が薄いために、針の刺入部位に沿った内出血がおこる場合があります。この場合2週間で消失することがほとんどです。
消炎鎮痛剤の内服
レーザー照射前に消炎鎮痛剤と胃薬を内服します。
眼球保護
照射時は、眼球を保護する目的でコンタクトシェルを用います。
コンタクトシェルを使用することで、レーザー照射が安全におこなえます。目の上(上眼瞼)、目の下(下眼瞼)にそばかすも照射可能となります。
レーザー照射
ひとつ、ひとつそばかすをスポット照射します。そばかすが密集している場合は面照射をおこないます。
レーザー照射時は、眼球保護用のコンタクトシェルを装着していても、赤い光が漏れ見えますが問題ありません。
治療後の処置
軟膏を塗布します。
クーリング
治療後は氷冷剤で10~20分冷却していただきます。
アフターケア
レーザー照射後1か月、3か月目に通院していだき、経過の診察をおこないます。
症例
Qスイッチ・アレキサンドライトレーザーでのそばかす治療例
症例1
20歳代女性
そばかすの治療目的で来院 すべてのそばかすを消したいとの希望あり。
レーザー治療を選択されました。
照射回数1回 来院回数4回(初診時、治療時、治療1か月後、4か月後) レーザー照射費用(全顔)\165,000,その他の費用※\14,800,合計\179,800
※その他の費用の内訳:
初診料\3,300,再診料(2回)\3,300,照射時:眼球保護コンタクトレンズ使用料\2,200,麻酔クリーム代\3,300,薬剤費(軟膏、鎮痛剤など)\1,380,トラネキサム酸内服(30日分)\1,320
症例2
20歳代女性
シミ・そばかすの治療目的で来院
すべてのシミ・そばかすを消したいと希望あり。レーザー治療を選択されました。
照射回数1回 来院回数3回(初診時、治療時、治療1か月後) レーザー照射費用(全顔)\220,000,その他の費用※\17,440,合計\237,440
※その他の費用の内訳:
初診料\3,300,再診料(2回)\3,300,照射時:眼球保護コンタクトレンズ使用費\2,200, 麻酔クリーム代\3,300,薬剤費(軟膏、鎮痛剤など)\1,380,トラネキサム酸内服(90日分)\3,960
症例3
20歳代女性
そばかすの治療目的で来院 すべてのそばかすを消したいと希望あり。
レーザー治療を選択されました。
照射回数1回 来院回数3回(初診時、治療時、治療1か月後)レーザー照射費用(全顔)\165,000,その他の費用※\13,150,合計\178,150
※その他の費用の内訳:
初診料\3,300,再診料(1回)\1,650,照射時:眼球保護コンタクトレンズ使用費\2,200, 麻酔クリーム代\3,300,薬剤費(軟膏、鎮痛剤など)\1,380,トラネキサム酸内服(30日分)\1,320
ダウンタイム
Qスイッチレーザーを用いたそばかす治療はIPLに比べて効果が高い反面、ダウンタイムがあります。ダウンタイムとはレーザー照射部位の炎症と痂皮(かさぶた)、炎症後の色素沈着が生じる期間のことです。
1)炎症と痂皮(かさぶた)形成
炎症(下図上段)
レーザーを照射した直後から照射部位には炎症(皮膚が赤く腫れること)がおきます。レーザー照射によりがそばかすの原因となるメラニン細胞が熱破壊されるためです。メラニン細胞が熱破壊されるため、レーザーを照射したそばかすが再発することはありません。炎症は効果の裏返しといえます。
痂皮(カサブタ)形成(下図下段)
レーザー照射部位に発赤がおこり、3~5日で痂皮(かさぶた)になります。照射から7~10日、長くても2週間までにはほぼ剥がれて、そばかすのないきれいな肌があらわれます。
2)炎症後色素沈着
Qスイッチレーザーを照射すると、その部位には炎症がおこり、後に色素沈着が生じることがあります。熱いお湯で手などに熱傷を負い、その傷が治ったあとに皮膚が茶色になることがあります。これを炎症後色素沈着といいます。
レーザー治療後の色素沈着も同じ原理です。皮膚にいったん炎症がおこると、メラニンの産生が増加し、局所的に皮膚の色調が濃くなります。そばかすのレーザー治療では、シミやアザの治療に比べ低い出力で照射するため、炎症後色素沈着はあまりみられません。
炎症後色素沈着がおこる場合は、治療しばらくして徐々に濃くなり、治療1~1.5か月目にピーク、その後徐々に薄くなり3~6か月でなくなります。まれに1年程かかることもあります
そばかす治療後の炎症後色素沈着のリスクが高くなる、色素沈着がおこる期間が長引く要因として以下のことがあげられます。
- 男性
- 生まれつき肌(素肌)の色が濃い
- 日にあたる環境で仕事、運動をしている
- 治療後に紫外線防御が不十分であった
3)炎症後色素沈着対策
炎症後色素沈着を予防したり、炎症後色素沈着がでても薄くするために以下のような方法があります。
予防策
- 日焼けしている場合、数か月待って肌色が薄くなるのを待ってからレーザー治療を行う
- レーザー治療前、あるいは治療直後からトラネキサム酸の内服をおこなう
- フォトフェイシャルM22(当院にあるIPL機器)で肌の色調を明るくしてからレーザー治療を行う
※フォトフェイシャルM22推奨回数2回
色素沈着対策
- トラネキサム酸の内服
- ビタミンC誘導体含有化粧水、ハイドロキノンなど美白剤の外用
そばかすのレーザー治療で消えないもの
そばかすのレーザー治療では、そばかす以外のホクロ、肝斑、脂漏性角化症、太田母斑が消えません。
- ホクロ
薄いホクロはそばかす・シミと鑑別が難しいため、レーザー治療時に照射することになります。
レーザーを照射したホクロは一時的に色が濃くなりますが、数か月して元の色に戻るか、薄くなります。 - 肝斑(かんぱん)
頬骨部上の皮膚に左右対称性にある色素沈着です。洗顔時に顔を擦って洗ったり、念入りにクレンジングをおこなうなどの摩擦がおもな原因です。それに紫外線、ホルモンバランスなどの要因が重なり、独特の色素斑が出現します。
肝斑が濃い状態で、肝斑に一致した部位にあるそばかすをレーザー照射すると、肝斑が悪化することになります。そうならないためにフォトフェイシャルによりプレトリートメントは重要です。
肝斑の原因となる細胞は正常なメラニン細胞です。レーザーで取り除くことはできませんし、取り除いてはいけません。白抜けになってしまいます。当院の治療では、肝斑が悪化しないように注意してレーザー照射をおこないます。 - 脂漏性角化症
厚みがあるシミで、Qスイッチレーザー単独では消えません。
治療については「脂漏性角化症」をご覧ください。 - 後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)
皮膚の深層にあるシミで、軽症の場合はそばかすと区別がつかず、そばかすのレーザー治療後に残ったシミとして、はじめて認識されることがあります。
治療については「太田母斑・後天性真皮メラサイトーシス(ADM)」をご覧ください。
4.そばかす(ソバカス)とシミの再発について
そばかすとシミを取った後、再発を防ぐ方法
シミ・そばかすは治療後に同じ場所に再発することはありません。もし、同じ場所にできたのであれば、いったんはなくなったように見えていても、細胞レベルでは取り切れず残っていたということです。
そばかすは遺伝的要因があり、紫外線を浴びることで、あらたにそばかすができる可能性は十分あります。また、老人性色素斑や脂漏性角化症は紫外線を防御して新たにできるのを予防することは重要です。
治療後は紫外線対策などのセルフケアをしっかりおこなうこととお勧めしています。日ごろからサンスクリーン、長袖の衣類や帽子の着用、日傘の利用をおこなってください。
サンスクリーンの外用量と塗りなおし
サンスクリーンは外用量を見直してください。容器に表示されたSPFやPAの効果を得るには、クリームでは顔全体にでパール玉2つ分を外用するとされています。 この量を外用すると結構厚いと気づかれると思います。ちなみに薄く塗った場合、塗る量を半分にするとSPF値は表示値の20~50%に低下するという報告もあります。 SPF50でも10~25に下がっているというのです。
サンスクリーンは時間とともに摩擦で薄くなりますから、表示のSPFの効果を発揮しているのは2~3時間といわれています。朝塗って学校や会社にいって、夕方日が照っている時間に帰宅して外を歩く場合、塗りなおす必要があります。
ビタミンC誘導体
ホームケア、セルフケアとしてはビタミンC誘導体がはいった化粧水の使用をおすすめします。
ビタミンC誘導体はビタミンC単剤にくらべて皮膚への浸透性が極めて高いものです。表皮基底層にまで浸透して表皮メラノサイトのメラニン産生を抑制し美白効果があります。
また、紫外線、喫煙、生活習慣から発生する活性酸素を除去します。活性酸素は皮膚のさまざまな部位に悪影響を及ぼすので、加齢にともなう皮膚の老化防止(エイジングケア)にも効果があり、手軽ながら非常に効果が高い、美容医療には欠かせないケア用品です。
なぜそばかすとシミは再び出てくるのか?
そばかす、シミは皮膚に紫外線を浴びることでおこります。いったんレーザー治療をおこなって、完全に消すことができても、治療後に紫外線予防をしていないと新しいそばかす、シミが出現します。
治療した部位に同じように出現した場合、治療がうまくいってなかった可能性があります。IPLやレーザートーニングで治療した場合、うすくなった状態で残っています。細胞は残っているので時間が経つと同じ部位に同じように出現します。
老人性色素斑や脂漏性角化症では治療後に細胞が残っていることがあり、数年して同じ部位に再発することがあります。治療により大半の老人性色素斑や脂漏性角化症の原因細胞は除去されていても、わずかに残っていた細胞が早いと数ヶ月、長いと数年かけて徐々に増殖してもとに戻ることはよく見ます。
そばかす・シミの再発は「ダウンタイムが少ない」といううたい文句で受けたアキュチップを含めたIPL治療、レーザートーニング、ピコレーザー治療でみることがあります。早いと半年で再発とかもあります。ダウンタイムとは治療後の炎症や炎症後色素沈着を指します。しかし「ダウンタイムが少ない」ということは「治療効果も少ない」ということです。「ダウンタイムが少ないのに治療効果が高い」はシミ治療で追い求めることですが、現実には実現していません。
いまはやりのピコレーザーは治療に使われだして10年になります。刺青には素晴らしい効果を発揮します。一時期、ピコレーザーはQスイッチレーザーの機能を凌駕したと思われていました。しかし、最近はシミ治療ではピコレーザーはQスイッチレーザーに劣るのでないかと学会等でも言われ始めています。新しいものが必ずしも良いものではないということが医療に当てはまる、あまり多くない例です。
5.そばかす(ソバカス)とシミ取り治療の疑問解決
質問をクリックすると解説があらわれます。
Q1. 一度出来たそばかすとシミは治せるのか?
一度できてしまった、そばかすやシミ(「狭義のシミ」では老人性色素斑と脂漏性角化症、「広義にシミ」では太田母斑、ADM、肝斑)を治すことは可能です。ただし、肝斑のみレーザーをつかわない治療で治します。
そばかす・シミ
そばかすとシミ(老人性色素斑や脂漏性角化症)はレーザーで1回で治療できます。適切は治療をおこなって、原因となる細胞を取りのぞけば再発はありません。そばかす、シミ治療に数回にわたるレーザー治療は必要ありません。
そばかすの原因細胞は遺伝子変異と紫外線、シミの原因は紫外線と表皮基底細胞におこった遺伝子変化、真皮層の加齢変化です。そばかす・シミの原因となる細胞を異常をおこした細胞なのでレーザーで取り除けば1回で治療完了です。
太田母斑・ADM
太田母斑やADMもレーザーで治療可能ですが、こちらは数回に治療は必要です。6か月おきにレーザー照射をおこないます。
太田母斑とADMの原因は真皮に存在するメラニン細胞(メラノサイト)です。本来、真皮にはメラニン細胞はないか、あってもメラニン産生をおこなっていません。レーザーで真皮から原因となる真皮メラノサイトを除けば治療は完了します。
肝斑
肝斑はレーザーでの治療がうまくいきません。
肝斑で色素をつくっているメラニン細胞は正常の細胞です。
摩擦、紫外線、老化により表皮と真皮の境界部付近(表皮基底膜の直下付近)に異常がおこっていると考えられます。紫外線ダメージを受けた表皮基底細胞、摩擦や紫外線、老化で異常がおこってる真皮にある線維芽細胞、血管上皮細胞、皮脂を産生する皮脂腺細胞からメラニン産生を促す物質がでていると考えられているのです。したがって、メラニンをターゲットとしたレーザートーニングを含めた色素レーザー治療はピントはずれと考えています。
肝斑治療に興味がある方はこちらをご覧ください。
Q2. そばかすとシミ取りレーザーは痛いのか?
レーザー照射は痛みをともないます。疼痛対策は重要です。
痛みが残ると、顔をしかめますから、目の周囲、鼻根部にシワがより、一部の皮膚がシワに隠れてレーザーがあたらない部分ができます。
そうなるとそばかす、シミの”うち残り”、”取り残り”となるので、疼痛対策には万全を期します。
局所麻酔薬入りクリームの全顔塗布、局所麻酔薬注射により顔面の神経ブロックをおこないます。
麻酔を使用しないレーザー照射があると聞きますが、麻酔なしで我慢できるくらいのレーザー照射の出力では、絶対にそばかす、シミは消えません。
Q3. そばかすとシミ取り後のダウンタイムはどの程度か?
顏全体にシミ・そばかす治療では、照射後に発赤がおこり、3~5日で痂皮(かさぶた)になります。照射から7~10日、長くても2週間で痂皮は剥がれ取れます。
照射レーザーの出力、肌質によっては治療後に炎症後色素沈着がでます。
そばかす治療では軽く、脂漏性角化症では必発で濃く出ます。老人性色素斑はその中間です。
炎症後色素沈着がおこる場合は、治療しばらくして徐々に濃くなり、治療1~1.5か月目にピーク、その後徐々に薄くなり3~6か月でなくなります。
肌色が濃い人、野外での仕事などで紫外線を浴びやすい方は、それより長くなります。
Q4. ピコレーザーとの比較は?
ピコレーザーは10年ほど前に日本でも販売が開始され、色素病変の治療の使われ始めた新しい機器です。米国で刺青(タトゥー)治療を目的として開発されました。
非常に短いピコ秒(単位、1兆分の1秒)の単位で照射できるので人工的な色素(刺青、入墨に使用される色素)や異物の色を破壊するにはもっとも優れた機器です。皮下にはいっている刺青の色素の粒子を非常に細かく破砕できます。破砕され細かくなった色素粒子はマクロファージに食べられて(貪食といいます)、血管から腎臓経由で尿に混じって排出されます。非常に短い時間に高い出力のレーザーを照射するので、破壊は色素の粒子にとどまり、周囲の細胞にダメージを与えにくいのが最大の特徴なのです。
ピコレーザーは発売当初、シミを含む色素性疾患の治療でもターゲットとするメラニンのみを破壊して、周囲に炎症が及ばないので、結果ダウンタイムが少ない治療ができると考えられていました。しかし、最近の学会発表では、逆の報告が出てきています。この理由はピコ秒での照射では細胞を破壊する力が弱いからです。
一方、Qスイッチレーザーはナノ秒(単位、10億分の1秒)の単位ででレーザーを照射するもので、メラニンをもった細胞をメラニンごと破壊します。そばかす、老人性色素斑、大田母斑・ADMではメラニンを豊富にもっているメラニン細胞や表皮基底細胞を破壊する必要があります。30年も前から使われているQスイッチレーザーは最新のピコレーザーより治療効果で優れていたのです。
Q5. 各治療法の取り扱い範囲は?
Qスイッチレーザー※1
そばかす・シミ(老人性色素斑)の治療では最適な治療器です。脂漏性角化症にも効果がありますが、厚みがある脂漏性角化症では炭酸ガスレーザーと併用するとほぼ100%の治療効果を得ることができます。当院でのメインの治療です。
※1 ルビー、アレキサンドライトレーザーの場合です。Nd:ヤグレーザーではそばかす・シミ(老人性色素斑)の治療効果が下がります。
ピコレーザー
刺青(タトゥー)の治療には最適な治療機器です。そばかすではQスイッチレーザーと同等の治療効果があります※2。シミ(老人性色素斑)ではQスイッチレーザーより治療効果が劣ります。
※2 波長532nmまたは波長755nmのアレキサンドライトレーザーでの場合
フォトフェイシャル
レーザーでなく、強い光を照射する原理からそばかす・シミ(老人性色素斑)の治療に不適です。肝斑では、出力、波長を制限する適正なフィルターを使用することよい効果を出します。また、くすみ、肌のリジュビネーションにも効果があります。
炭酸ガスレーザー
シミ(老人性色素斑)は炭酸ガスレーザーで治療することが可能です。熟練した医師だとQスイッチレーザーと同等の治療効果を出せます。また、盛り上がった脂漏性角化症では最初に使うべき機器です。
各機器の適応
Qスイッチレーザー、ピコレーザー、フォトフェイシャル、炭酸ガスレーザーの適応とまとめたものです。私見です。
Qスイッチレーザー | ピコレーザー | フォトフェイシャル | 炭酸ガスレーザー | |
ソバカス | ◎ | ◯~◎ | △※2 | 適応なし |
シミ(老人性色素斑) | ◎ | ◯ | △※2 | ◯ |
脂漏性角化症 | 単独では△~◯※1 | △~◯※1 | ✕ | ◎ |
太田母斑・ADM | ◎ | ◯~◎ | ✕ | 適応なし |
肝斑 | ✕ | ✕ | △~◎※3 | 適応なし |
刺青 | ◯ | ◎ | 適応なし | 適応なし |
※1 単独で治療では、取れないものがあります。炭酸ガスレーザーと組み合わせで◎
※2 そばかすを消すことはできないので△。一時的に薄くすることは可能です。
※3 フォトフェイシャルをシミ治療の設定でおこなうと、肝斑が悪化します。肝斑に用いるためには適切な波長のフィルターを用いて、出力を調整して照射して◎となります。
6.まとめ
私のそばかす・シミ治療において「ダウンタイムの少ない効果的な治療」は存在しないと思っています。
ダウンタイムが少ないということは、治療効果が少ないということです。
当院の治療方針は「Qスイッチレーザーを用い、すべてのそばかすを、1回の照射で綺麗に消す。」ことです。
綺麗な治療経過を得るために、レーザー照射前に2回のプレトリートメントをフォトフェイシャルをつかっておこないます。
当院は「Qスイッチレーザーを用い、すべてのそばかすを、1回の照射で綺麗に消す。」を開業以来18年間おこなっています。
7.そばかす(ソバカス)レーザー治療料金
そばかすQスイッチレーザー治療料金(全顔のみ)
そばかすQスイッチレーザー治療料金はこちらをご覧ください。
フォトフェイシャルM22料金
フォトフェイシャルM22の料金はこちらをご覧ください。
そばかすのレーザー治療のご相談は下の「院長診察 シミ・たるみ・シワ 初回カウンセリング」をクリックするとWEB予約サイトにいきます。
Qスイッチアレキサンドライトレーザー治療の概要
診療区分 | 自由診療 |
---|---|
照射出力等 | Qスイッチレーザー 3.0~18J/c㎡ |
治療期間及び回数 |
治療回数は1回 |
施術によるリスク・副作⽤ | 照射に際しては局所麻酔含有クリームあるいは麻酔注射剤を使用します。 治療後、照射部位は炎症がおこります。 治療部位は痂皮、びらんになり、上皮化するまで2週間かかります。 |
施術に要する費⽤(レーザー照射料金のみ) 別途診察料金、抗生剤などの費用が必要。 |
全顔照射\132,000~¥220,000 |
承認区分 | ALEXレーザーは国内承認機器です。 |
フォトフェイシャルM22治療の概要
診療区分 | 自由診療 |
---|---|
照射出力等 | 12~16J/c㎡ |
治療期間及び回数 |
くすみ・美肌目的の治療では回数に規定なし 照射は2~3か月おき |
施術によるリスク・副作⽤ | 照射部分に一致したマイクロクラストが生じます。 |
施術に要する費⽤ | 1回 ¥25,300 6回目以降/レーザー治療後割 ¥22,000 |
承認区分 | フォトフェイシャルM22は国内承認機器です。 |
注)治療には、国内未承認医薬品または医療機器を⽤いた施術が含まれます。
治療に⽤いる医薬品および機器は当院の医師の判断の元、個⼈輸⼊⼿続きをおこなったものです。
個⼈輸⼊において注意すべき医薬品等についてはこちらをご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/050609-1.html