更新日:2022.6.14/公開日:2017.9.4
このコンテンツは山手皮フ科クリニック 院長 豊福一朋が100%オリジナルで書いています。
2023年7月29日をもちまして一般保険診療を終了させていただきました。この記事はご参考までお読みください。
脂漏性湿疹(脂漏性皮膚炎)
症状
皮膚科の外来ではよくみられる慢性の湿疹・皮膚炎です。
成人では頭、顔(とくに眉毛から眉間、鼻唇溝、耳の内側と後面)、胸、背中の正中部、わきの下、乳房の下、へそ、股などの脂漏部位(皮脂腺が多く存在する部位)にみられ、通常はかゆみがあります。
頭皮ではフケと赤みをともないます。一般にいわれている「フケ症」は軽症の脂漏性湿疹(脂漏性皮膚炎)です。
顔面では眉毛から眉間にかけて、鼻唇溝、耳の内側と後面が生じやすい部位で、カサカサとして赤みがあります。
脂漏性湿疹(脂漏性皮膚炎)は外用薬で一時的に症状はよくなりますが、治療をやめると再発しやすいので長期でつきあっていくことになります。
乳児脂漏性湿疹(脂漏性皮膚炎)
生後1ヵ月前後の赤ちゃんの頭部や顔面にもカサカサとした赤い発疹がみられることがあり、「乳児脂漏性湿疹(脂漏性皮膚炎)」と呼ばれます。
これは生後2、3ヵ月ころになれば自然に治ってしまうことがほとんどです。
原因
成人の脂漏部位に皮膚炎があることから、皮脂腺の成熟が病気と関係しているといわれていますが、はっきりとした原因はわかっていません。
マラセチアというカビ(真菌)の一種も原因といわれています。マラセチアは皮脂が好きな常在菌で我々の皮膚にも普通に存在しています。
脂漏性湿疹(脂漏性皮膚炎)の方の皮膚はたまたま皮膚の環境(たとえばpHや皮脂の性質)がマラセチアと相性がよいために、マラセチアがそこで繁殖して皮膚に炎症をもたらして皮膚炎をおこしていると思われます。
治療
1)全身療法
かゆみがあるときは抗アレルギー剤を内服します。
2)外用療法
ステロイド外用剤が一般的です。
顔なので弱めのランクのヒドロコルチゾン酪酸エステル外用剤(ロコイド軟膏・クリーム)、クロベタゾン酪酸エステル外用剤(キンダベート軟膏・クリーム)を使います。
マラセチアの増殖を抑えるケトコナゾール(ニゾラールクリーム・ローション)も有効です。
一般には症状が強いときはステロイド外用剤を使い、症状が軽くなってからケトコナゾールなどの抗真菌剤を使用します。
再発を予防するために時々(2日に1回とか1週間に2回とか)ケトコナゾール(ニゾラールクリーム・ローション)を外用するのも効果的です。
頭皮は軟膏・クリーム基材は塗りにくいので、ローションが使いやすいです。プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルローション(リドメックスローション)などを使います。
頭皮の皮膚炎が強くてフケが頭皮にこびりついている場合には、尿素含有ローション(ウレパールローションなど)を使ってフケがとれやすいようにします。
生活上の注意
寝不足、仕事や生活のストレスはからだの免疫に変調をおこすので、脂漏性湿疹(脂漏性皮膚炎)が悪化することがあります。
生活のリズムを整え、睡眠が不規則にならないように注意することも必要です。
洗顔、洗髪は皮脂を適度に保つ必要があるので、定期的に行うようにします。
過度に行うと頭皮や皮膚を傷めることになりますので注意します。
洗髪の頻度は必ずしも毎日おこなう必要はなく、痒みが生じない、フケがでてこないといった状態を維持する程度でよいと思います。
シャンプーはフケ止め用のものがいろいろ市販されておりますが、使ってみて気に入ったものを使用されればよいでしょう。
頭皮に直接つく整髪料(ヘアトニックやヘアリキッド)は皮膚の症状が強いときは刺激で悪化させる可能性があるので控えておいた方がよいでしょう。
頭皮につかないクリーム、ムース、スプレーなどがよいと思います。