更新日:2023.10.01/公開日:2017.3.7
脂腺増殖症
1.脂腺増殖症とは
脂腺増殖症は顔面の前額部や鼻(Tゾーンの部分)・頬部にできる一見ニキビのような黄色または白色の丘疹(皮膚のふくらみ)です。
大きさは直径が1~5mmほどで、1つできることも、多発することもあります。ニキビは良くなったり悪くなったりしますが、脂腺増殖症はずっとそのままの状態で数年かけて少しづつ大きくなります。
若い人では数ヶ月で急速に大きくなることがあります。ニキビが半年以上そのままの状態であれば脂腺増殖症かもしれません。
脂腺増殖症はオイリー肌の人に多い傾向にあります。肌がオイリーである男性に多いのですが、女性では気にする人が多く、治療目的で受診される方は女性が多くなります。
教科書では高齢者に出現するとありますが、実際は中年期以降、早ければ20才前半から出始めることもあります。年齢を経るごとに数が増えます。
成熟した皮脂腺(皮脂をつくる器官)の良性の増殖なので放置しても問題ありません。自然に消えることはなく、外見に影響を及ぼすときには治療の対象となります。
イボ(尋常性疣贅)と診断され液体窒素により冷凍凝固治療がおこなわれていることがよくあります。冷凍凝固を治療を続けると瘢痕を残す可能性があります。
2.脂腺増殖症の原因
毛を取り囲む組織を毛包といいます。
毛包に隣接して皮脂を産生分泌する皮脂腺が存在します。
皮脂腺は毛包の上部につながっていて、皮脂は毛穴を通って皮膚の表面に拡散していきます。
脂腺増殖症はこの皮脂腺が腫瘍性に大きくなったものです。
皮脂腺が増殖する原因は加齢ですから、年齢とともに脂腺増殖症は増えていきます。
若い人でも脂腺増殖症が出現することがあります。
男女ともに男性ホルモンが皮脂腺に作用して皮脂腺の増殖を起こして発症すると考えられています。
3.山手皮膚科クリニックの脂腺増殖症治療
一般におこなわれている治療
液体窒素による冷凍凝固、手術、高周波による治療、レーザー治療があります。
ピーリングは効果がありません。
ヨクイニンが処方されていることがありますが、ヨクイニンはイボ(尋常性疣贅)の治療薬です。
脂腺増殖症がイボと間違われて診断されているケースが多く、当然効果のない治療となります。
一般には1)液体窒素による冷凍凝固、2)メスを使った手術、3)高周波による治療、4)レーザー治療がおこなわれています。
当院では4)のレーザー治療で脂腺増殖症を治療します。
1)液体窒素による冷凍凝固
液体窒素を浸した綿棒で脂腺増殖症を冷凍凝固し細胞を破壊します。
すべての脂腺増殖症の細胞を壊すことはできず、完全に治ることはありませんが、少し皮膚の盛り上がりが減ります。
治療後は綿棒の大きさの炎症後色素沈着が起こりますが半年~2年程度で消えます。
強く冷凍すると治療部が目立つ瘢痕になるのが欠点です。
2)メスを使った手術
メス、あるいは円刃刀(パンチ)で脂腺増殖症をくり抜き切除する方法です。
大きさによってはメスで紡錘形に切除して縫合します。
手術に出血が多く、手術後は大きめのガーゼで保護しないといけないことが欠点です。陥凹した瘢痕を残して治ります。
3)高周波による治療
脂腺増殖症に電気を通す針を刺して、高周波の電流を流して脂腺増殖症の組織を破壊する方法です。
小さいものでは1回で、大きいものでは数回の治療が必要になります。
※1)~3)の治療は当院ではおこなっていません。
山手皮フ科クリニックでの治療
4)レーザー治療
炭酸ガスレーザーを用い脂腺増殖症を蒸散させて治療します。
メスの手術とくらべて術後の出血が少なく、小さめのガーゼや目立たない創傷保護材(ビジダームテープ)で傷を覆うだけでよいので、術後の見栄えがよく付け替えが簡単です。
当院ではスキャナ付炭酸ガスレーザーCO2RE(コア)のスキャナモードを使用しています。
治療方法 | 利点 | 欠点 |
1)液体窒素による冷凍凝固 | 機器が必要なく手軽におこなえる | 完全には治らない 治療後の色素沈着が長い 強く治療すると瘢痕が残る |
2)メスを使った手術 くり抜き法 単純切除縫合 |
機器が必要ない | 出血が多い くり抜き法では目立つ陥凹が残る 縫合の傷が残る |
3)高周波治療 | 出血が無い 治療後の瘢痕が目立ちにくい |
高周波治療機器が必要 直径が大きいと治療回数が増える |
4)レーザー治療 | 出血が少ないあるいは無い 治療後の瘢痕が目立ちにくい 多くは1回の治療で終了する(ときに2回必要) |
レーザー機器が必要 |
4.治療方針
スキャナ付き炭酸ガスレーザーを用いて1回で治療を終わらせる
脂腺増殖症は皮膚の真皮の深いところまで存在します。
治療では深部の組織(真皮深層)まで取り除く必要がありますが、浅い部分のみを取り除き治療を終わらせると、深層に残った組織が増殖して再発します。
再発部を再び治療することになりますが、何回も治療を繰り返すと組織が硬い瘢痕組織になって皮膚の再生能力が低下します。そうなると治療部位は目立つ瘢痕になります。
当院ではスキャナ付き炭酸ガスレーザーを使用して、できるだけ1回の治療で脂腺増殖症を除去します。このレーザーの特徴は後述します。
治療を考えていらっしゃる方へ
直径1mm以上の脂腺増殖症の治療では治療後に傷跡を残さないといったことは非現実的です。
かならず凹んだ傷跡(瘢痕)になることをご理解いただいた上で治療をおこないます。
脂腺増殖症の治療では、皮膚からドーム状に盛り上がった状態より、治療後に陥凹した状態の方が外見上目立たないことが治療をおこなう利点であると考えます。
5.治療機器紹介
スキャナ付き炭酸ガスレーザー
当院ではスキャナ付き炭酸ガスレーザーを脂腺増殖症の治療に使います。
治療後の傷跡を最小限にするためには、レーザー治療の際に発生する熱で治療部位の周囲組織へのダメージを最小限にする必要があります。
スキャナ付き炭酸ガスレーザーはコンピューター制御のもと、正確に円柱状に脂腺増殖症の組織を削り、治療スピードが格段に速いのが特徴です。
下の写真はスキャナ付き炭酸ガスレーザーと通常型炭酸ガスレーザーを用いて薄い木片表面を蒸散させたものです。
左はスキャナ付き炭酸ガスレーザーを用いたものです。コンピューター制御で正確に円柱状に木部を蒸散させて取り除きます。
右は通常型の炭酸ガスレーザーを用いたものです。手ブレによりどうしても木部の蒸散が不規則になり凸凹ができます。また、通常型の炭酸ガスレーザーでの治では治療時間が長くかかります
治療時間が長いと治療部位の周囲の組織に熱が伝達され、組織ダメージが大きくなり、瘢痕が目立ちやすくなります。
スキャナ付き炭酸ガスレーザーと通常型炭酸ガスレーザーに比較(映像)
スキャナ付き炭酸ガスレーザーと通常型炭酸ガスレーザーの蒸散方法を木片とつかって比較したものです。木部の蒸散に要する時間に注目ください。
蒸散にかかる時間が長いほど、周囲への熱拡散は大きくなります。
皮膚でおこなった場合は、治療に長い時間がかかるほど、治療部位の周囲組織への熱拡散が大きくなり、組織ダメージが大きくなります。
治療部位の組織ダメージが少なければ、傷跡の目立ちが少なくなります。
映像では木片を蒸散させる時間はスキャナ付き炭酸ガスレーザーで5秒、通常型炭酸ガスレーザーで30秒です。
レーザーの特徴はスキャナ付炭酸ガスレーザーCO2RE(コア)をご覧ください。
6.症例紹介
症例説明
20歳代女性です。鼻背の腫瘤の治療目的で来院されました。
脂腺増殖症の治療後は必ず陥凹が残ることを納得いただいた上、治療を希望されました。後日、炭酸ガスレーザーにて治療をおこないました。
※初回予約当日にレーザー治療はおこなっていません。また、当院で過去に脂腺増殖症の治療をおこなっていない方は、初回は1個のみの治療となります。
直径が3~4mmの大きい脂腺増殖症です。治療時にマーキングをおこない、局所麻酔注射剤の注射をおこないます。注射時は痛みがあります。
通常、脂腺増殖症の組織は皮膚の深いところ(真皮深層)にまで存在するので、スキャナ付き炭酸ガスレーザーでは深部まで蒸散させます。
浅く削ると後日再発したり、中心が陥凹して周囲が盛り上がる”カルデラ”状の再発がおこります。
治療部にはビジダームテープという創傷保護剤を3週間貼ります。右は3ヵ月の写真です。
必ず陥凹と白い瘢痕を残して治癒します。この後も徐々に傷は盛り上がっていきますが、やはり最終的に陥凹と白く傷が残ります。
通院回数と総費用:
治療にかかった費用:レーザー照射\49,500(\16,500×3)、抗生剤・軟膏など\1,920
7.料金
脂腺増殖症レーザー治療料金はこちらをご覧ください。
8.治療の流れ
1 )予約
診察はすべてWEBからご予約をお取りいただく予約制です。クリック受付ならびにお電話では予約の受付はいたしておりません。
「予約サイト」へいき、選択メニューボタン
から 「脂腺増殖症のご相談」 を選択ください。
2)初診・初回相談・再相談
- 脂腺増殖症のレーザー治療をご希望の方は、先ず『院長外来』の診察にご来院いただいております。診察時に診断と治療方法の説明をおこないます。
- 前回相談日ならびに前回レーザー治療から1年以上経過している方は、再度診察(再相談)が必要です。
- 当院は方針として、診察と治療は同時に行っておりません。治療までに2回のご来院が必要です。
3)治療
- 初診・初回相談・再相談の後に治療が可能となります。
- 治療は自費診療です。
- 受付時に署名済みの説明同意書をご提出いただきます。※2回目以降の治療の方、前回治療と治療方法、治療後の処置が変更のない方は不要です。
レーザー照射手順
- 前処置:照射部のお化粧や日焼け止めを落とします。脂腺増殖症の周囲1cm2程度の範囲で十分です。
- 麻酔:キシロカイン入注射麻酔(局所麻酔)を使用します。注射麻酔の穿刺時と注入時に痛みがありますが、レーザー照射による痛みは完全になくなります。注射麻酔を使用せずにホクロのレーザー治療はできません。
- 眼球保護:必要時、専用のゴーグルを使用します。
- レーザー照射:炭酸ガスレーザーを使用します。
- 「大きな脂腺増殖症」や「治療時の出血が多いとき」、「治療後の出血が予想される場合」は創を縫合します。縫合が必要な場合、別途5,500円を頂戴します。縫合の有無については治療時の判断となります。
- 照射後の処置:創傷保護剤ビジダームまたは抗生剤軟膏と絆創膏で創部を保護します。
4)治療後の処置と経過診察
- 消炎鎮痛剤を3日間内服します。
- 創傷保護剤で創部を3週間保護します。通常は治療後からドレッシング材のビジダームを使用します。創が深く、治療後の出血が予想されるときは、始めの1週間は抗生剤軟膏塗布後に絆創膏で保護し、その後の2週間はビジダームを貼付します。
- ビジダームまたは絆創膏貼付中は治療箇所へのお化粧はできません。
- 初回治療では1週間後に経過診察があります。経過診察のご予約はクリニック受付またはお電話にて承ります。経過診察は自費診療です(自費診察料1,650円)。
- 2回目以降の治療では、縫合を行った場合(※)を除き原則経過診察はありません。※1週間後に抜糸にご来院いただきます。
9.注意事項
- 治療当日の飲酒・運動・入浴はお控えください。シャワー浴と洗顔は可能です。
- レーザー治療により脂腺増殖症を除去することができても、治療部周囲に存在する脂腺の増殖により、同一部位にリング状に再発することがあります。
- 毛髪(髪の毛、眉毛、睫毛、髭など)のある部位に存在する箇所の治療では、治療箇所が一時的または永久的に脱毛となる可能性があります。
- これまでに既往がなくても、体質、治療部位によっては治療痕が盛り上がる(肥厚性瘢痕、ケロイドになる)可能性があります。
- 肥厚性瘢痕、ケロイドが生じた場合は、ステロイドの注射(1回550円)または貼付剤(1枚550円)にて治療を行います。脂腺増殖症のレーザー治療後に生じた肥厚性瘢痕、ケロイドの治療は自費診療(自費診察料1,650円+上記薬剤費)となります。
- レーザー治療は人為的に熱傷を生じさせ治療対象を破壊または変性させるものであるため、治療後には発赤、灼熱感、痛み、痒み、水疱、炎症後色素沈着などの症状が見られる可能性があります。また、色素脱失、瘢痕を生じる可能性が全くないわけではありません。
- 治療後にレーザー治療箇所の異常な(赤み・腫れ・痒み・痛み)や、ご心配なことがある場合は速やかにご連絡いただき受診をしてください。ご自身での自己判断で異常発生より1週間以上放置された場合、適切な処置が行えず対応できなくなる場合があります。
- 治療における患者様の効果に対する期待は様々です。さらに治療における患者様の皮膚の反応も様々です。医療には多くの不確実、不確定の要素が含まれており、医療行為に確実性はありません。したがって、治療に際してはこの点をご理解いただき、治療前の患者様の期待に対してご満足いただけない場合でも、既に実施された治療費の返金はいたしておりませんので予めご了承ください。
- 料金、治療方法、治療後の処置は、将来において変更となる場合があります。また、この同意書に記載の金額は消費税を含みます。
- 説明同意書交付後に治療方法、治療後の処置に変更が生じた場合は、改めて新しい説明同意書への署名と提出をお願いいたします。
- 初診(初回相談)または最終治療のいずれか直近の日付から1年を経過した後、治療開始または治療再開をご希望の場合は、初診から治療開始または治療再開となります。
スキャナ付炭酸ガスレーザーによる脂腺増殖症治療の概要
診療区分 | 自由診療 | ||||||||||||||||||
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照射出力等 | 0.5~4J/c㎡ | ||||||||||||||||||
治療期間及び回数 |
1回で終了、経過診察は治療1週間、3か月後(不要の場合あり) |
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施術によるリスク・副作用 | 治療直後にはレーザー照射部位に発赤と痛みがでます。。 まれに治療部位が盛り上がって治癒することがあります(肥厚性瘢痕)。 治療後はかならず陥凹した傷跡を残します。 稀に治療周囲部に小さく再発することがあります。この場合再度治療が必要です。 |
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施術に要する費用 |
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承認区分 | スキャナ付炭酸ガスレーザー・コアは国内承認機器です。 |
注)治療には、国内未承認医薬品または医療機器を用いた施術が含まれます。
治療に用いる医薬品および機器は当院の医師の判断の元、個人輸入の続きをおこなったものです。
個人輸入において注意すべき医薬品等についてはこちらをご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/050609-1.html